そもそも「共有部分に私物を置くのを禁止します」という文言が変なのだ。ではどこが変なのか?
(これは、マンションの発売当初、マンションを売りつけた分譲会社がつくった初期設定の規約からある条文で、理事会はいまだにカスタマイズできていないのだけど、経験的に分譲会社はそのような条文を加えているようだ)
本来なら「共有」という概念は「みんなでシェアして使いましょう」ということだろう。「他の人に迷惑をかけない範囲で、だれが使ってもよいですよ」ということだ。
しかし分譲マンションの場合、分譲スペース以外はすべて「共有部分」と規定されてはいるが、じっさいは「共有」ではなく「非独占」という意味なのだ。ここに言葉のごまかしがある。
分譲マンションの「分譲部分」と「共有部分」という文言は、じつは「占有部分」と「非占有部分」という意味であって、「共有」という概念はどこにも存在しないのである。
ひとつの団体が協同で力を合わせてマンモスを狩ったとする。倒した一頭のマンモス全体がその団体のものだ。ひとつの集団でもってマンモス全体を「共有」するのだ。その認識のうえにシェアするという感覚は生まれるだろう。しかし、それぞれ個人が勝手に独占部分を主張し、奪い合うような状況には「共有」という概念=感覚は生まれ得ないだろう。
つまりこういうことも言えるだろう。分譲会社はマンションを売る際に、買い手であるオーナーたちがマンションを共有するというよりも、それぞれの一区画を奪い合うものだと定義している。そのうえでトラブルを避けるために、奪い合ってよい区画と奪い合っていけない区画をあらかじめ規定しているということだ。
だから規約の文言は「共有部分に私物を置くのを禁止します」ではなく、「非占有部分に私物を置くのを禁止します」という言葉に変えるべきなのだ。それならすべての人に納得がいくだろう。
けれどもしも「共有」というポジティブな概念を使うなら、そこからはどんなにねじくっても「私物を置いてはいけません」というネガティブな述語はゼッタイに導かれないはずだ。
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というふうに、訴えられる側も訴える側もルールを、規約を、ひるがえって根本から考えてみるということをこの国の人はしないように思う。
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