今回の公演の首謀者である西成彦さんは、ポーランド文学や比較文学の先生で、『外地巡礼 』という本で読売文学賞もとっていらっしゃいます。
なのに僕は去年の暮れ、はじめて西さんとそれからいっしょに研究されているそれぞれスペシャルな先生方に出会ったとき、でも、なぜジェノサイドなのだろうとじつは思っていました。
そんな途方に暮れる僕の最初の導き手は当時まだほんとうに生きていらした大江さんでした。大江さんの「人生の親戚」の一節でした。
「学生の頃から読んできて、自分でも教えるのにも使っている、アメリカの女流作家が、広島の原爆以降、世界で起こることはすべてそれと関係があるといっています。私もそう思っています。私の子供が生まれる際に事故があったのも、広島以後の世界の出来事だからこそ、と考えています。自分のことでオオゲサですけど」
さらにその後、西さんの著書を読み、中村隆之さんや久野量一さん、近藤宏さん、福島亮さんの本やテキストを読みながら、自分はなんて世界の弱い側の人々の物語を知らなかったんだろうと思い、ああそうか、ジェノサイドとはあまねくすべての人間みなにつながっている事象なのだということをいま痛感しています。
けっして癒えない傷、忘れることのできない記憶、苦しみと非望と、喪失と悪夢の連続のなかで、言葉が、言葉と音楽だけがしずかに未来を指し示しています。
どうか、劇場へ足をお運びください。
ここに言葉があります。音楽があります。いつも常に立ち戻らなければならない人の生の営みの原点がここにあるのです。
「死者たちの夏2023」公式HP
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